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ポップソング今昔

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2024.02.05

暫く前の話ですが、年末の新聞には著名人の「今年の物故者」一覧が掲載されます。しげしげ眺めている中で目に留まった人を少しピックアップします。(名前の後のカッコ内は享年)

デイビッド・クロスビー(81)
詳細はネットに譲りますが、この名前を見て「Ohio」(1970)を思い出しましたのでこの曲について。CSN&Yによる、1970年にオハイオ州で起きた学生の反戦デモを鎮圧するために州兵が発砲し死者が出た事件に対する怒りと哀しみを歌った、反戦・反体制ソングです。「ブリキの兵隊とニクソンがやって来て、俺たちを孤立させた。ドラムの音が聞こえる。オハイオで4人が命を落とした!」こんな歌詞です。曲中で何度も繰り返す「Four dead in Ohio」は恐らくこのニュースを伝えたLIFE誌の見出しだったのでしょう。作詞・作曲をしたニール・ヤングが報に接した時の憤りの強さが伝わってきます。曲の終盤ではデイビッド・クロスビーが「何故だ!何故4人は死んだ?何故なんだ!」と泣き叫ぶ声まで収録されていて、凄みを感じます。
さて、「無抵抗な市民に武力を行使する為政者」という構図の内紛や戦争は、この曲が世に出て50年が過ぎた今でもごく当たり前に世界のどこかで起こっています。異国の惨状を伝えるニュースで家族や友人を失い嘆き悲しむ人を見る度に、この曲が頭の中で聞こえて来ます。

バート・バカラック(94)
主に1960年代から80年代にかけて数々のヒット曲を生み出した作曲家です。バカラックの曲を聞いたことが無いという人は稀でしょう。P・ニューマン、R・レッドフォード主演の映画「明日に向かって撃て」の劇中歌「雨にぬれても」(1969)は、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。「雨(=心配事)は止まないけれど大丈夫。僕は自由だ心配ないさ。」(超意訳要約)強盗の映画でこの歌詞はどうかと思いますが、軽快で印象的なメロディーの素敵な曲です。
ところでこの曲、意外な使われ方をしています。百貨店で働く人は屋外の様子が判らないものですが、彼らに降雨を知らせる目的でBGMとして流すのだと昔聞きました。因みに、雨が上がって晴れた時はどんな曲が流れるのでしょうね。

おまけ
CSN&Yの「Ohio」には70年当時のニクソン大統領が登場しますが、ニクソンつながりで1曲、サイモン&ガーファンクルの「7 O'clock News/Silent Night」(1966)をご紹介。
この曲は、美しい歌声のデュオが歌うきよしこの夜に、7時のニュースの音声がかぶってきます。ニュースにはキング牧師やニクソンが登場し、きな臭く不安定な当時の社会情勢をうかがわせます。きよしこの夜は「Sleep in heavenly peace」(安らかに眠りなさい)と歌い、ニュースは人種差別やベトナム戦争という不穏な現実を突きつけ"Good Night."と終ります。クリスマスの夜に皆が静かに神に祈りを奉げている時に全然平和じゃないニュースが流れてきて...そんな情景が浮かびます。いかにも皮肉を効かせたこの曲は、聞く人を酷く落ち着かない気持ちにさせる、それでも平和への祈りがこめられた忘れられない1曲です。

どうも古い曲ばかり取り上げましたが、念のため、私はその時まだ生まれていませんでした。


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